とまとと tomatoto小さな村の小さなゲストハウス兼、エントランスが誕生しました。

©tomatoto

とまとと tomatoto

サウナ愛好家 市橋直樹さん
in hidaka village
Eat & Stay とまとと
0°
hidaka village
サウナで町おこし?
人と地域を「ととのえる」、新しい地域活性のカタチ。
コラボ 2021.05.31
サウナが「おじさんのリフレッシュの場」から「若者の一大カルチャー」へと進化を遂げたこの数年。サウナ愛好家を「サウナー」と呼び、サウナ専門誌やサウナをテーマにしたドラマまで誕生する中、次なる展開としてアツいのが、水辺に専用テントや移動式コンテナを置いて、その中でサウナを楽しむ「アウトドアサウナ」です。

このアウトドアサウナ、ロケーションが屋外というだけで、楽しみ方は普通のサウナと変わりません。室内で薪ストーブを焚いて温度を上げていき、いい感じに汗をかいたら目の前の天然水風呂=川(湖や海のパターンもあり)へザブン。そして風に当たりながらひと休み。
これを2、3回繰り返すことで、全身のすみずみまで血液がめぐり、心と体が解放されて極上のリラックス感...俗に言う「ととのう」が得られるんだとか。
今や全国各地でアウトドアサウナのフェスが行われるほどのムーブメントとなっています。
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このアウトドアサウナにハマった市橋直樹さんは、名古屋市在住の会社員。人材関連の企業に勤める傍ら、休日には全国のサウナ施設やイベントを巡り、サウナーコミュニティを広げています。
そんな彼は、サウナが縁で、日高村の関係人口創出事業に参画しています。

「ととのう」を求めて東へ西へ。 そして日高村との出会い。
市橋さんがサウナにハマったのは2017年頃のこと。ある日ふと「サウナの魅力ってなんだろう?」と気になりネットで調べたのがきっかけでした。それまでは「ビジネスマンが汗だくになって暑いのを我慢する場所」くらいにしか思っていなかった市橋さんでしたが、実際には自分が思うよりもずっとマニアックで奥が深い世界観に興味を持ち、早速サウナを体感。想定外の気持ちよさにズルズルとハマっていきました。そこから、話題のサウナ施設やイベントを求めて日本各地を飛び回る生活が始まります。
「これまでで特によかったのは、高知県の知人の自宅設置のテントサウナで楽しんだ星空サウナと、福井県勝山市での雪の中のサウナです。僕にとってのアウトドアサウナの魅力は、小さなハコから出た瞬間、目の前に大自然が広がっていること。火照った体できれいな水に浸かると、自然と一体になれる感覚があるんです。その感覚を味わうためなら、どんなに遠くの町でも足を運ぶ価値があります!」
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元来、一度ハマるととことんやり抜く凝り性の市橋さん。 それはサウナに対しても同じで、ついには日高村とコラボして、アウトドアサウナをより楽しめる商品開発に乗り出すことになりました。

市橋さんと日高村の出会いは、東北・丸森町へのサ旅(サウナを目的とした旅行)でした。 そこで日高村の仁淀川テントサウナのことを知ります。
『日高村ではテントサウナの中で地元の人が異業種交流している...?なにそれおもしろそう!』と、日高村へのサ旅の計画を立てていたところに、村から関係人口創出事業の誘いが。もちろん快諾。以降、サウナを活用した日高村活性化計画のアドバイザーとして、村のサウナ関連事業に関わっています。

サウナ×地域は可能性のかたまり。
アウトドアサウナは一過性のムーブメントではなく、地方創生の救世主という見方もあります。実際に北海道や福島県、佐賀県など、サウナで町おこしに取り組んでいる自治体も多々あります。というのも、サウナは地域資源との親和性が高く、「サ旅」や、「サ飯」(サウナの後の食事)、また地元産業とコラボしたプロダクト開発など、地域に紐付けやすいコンテンツなのです。

高知県でも現在、日高村(仁淀川)のほか、四万十市と四万十町(いずれも四万十川)などでアウトドアサウナプロジェクトが稼働中。良質な川に恵まれた高知において、カヌーやSUPに続く新しい川レジャーとして各地域に広がりを見せそうです。
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「サウナで地域活性化」という概念が全国的に定着しつつある今、各地のアウトドアサウナを体験してきた市橋さんは、「サウナ×地域性」をどうとらえているのでしょうか?
「個人的には、都会ではなかなか味わえない、"その地域だからこそ"の景色の中でできる活動・遊びだととらえています。きれいな川が流れる風景や、踏み荒らされていない雪原の風景は、その地域に行かなくては体感できない魅力です。サウナは、そういったそれぞれの地域が持つよさを味わうきっかけのひとつだと思っています」
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自然に身を委ね、自分の心と体を解放する。
そうしてリセットされた体で、地域の人や食、文化にふれる...アウトドアサウナは、自然体験観光の新しいスタンダードになり得るかもしれません。

またアウトドアサウナで使用される専用テントやコンテナは、基本的にひとりまたは身近な人と少人数で入る点も、withコロナ・afterコロナのレジャーとして安心感があり、今後ますます人気が高まりそうです。

日高村発・サウナーによるサウナーのための サウナアイテムが誕生。
さて、話は前述した、日高村とのコラボ商品に。
サウナと日高村が好き過ぎるあまり、「日高村の素材でサウナ関連商品を作りたい!」と思い始めた市橋さん。そんな折、サウナが縁で村内の生姜農家さんに出会い、生姜には、出荷作業時に廃棄される部分があることを知ります。 市橋さんはそれを原料に、テントサウナ用のロウリュ(熱したサウナストーンにアロマ水をかけて水蒸気を発生させ、発汗を促す入浴法)に活用出来ないかと考えました。

村の関係者に相談すると開口一番「それいいね!」の声。地域のためにおもしろいことができるなら!と、原材料の生産・企画・パッケージデザイン・製造のすべてをサウナ愛好家たちで手掛けるプロジェクトが始まりました。
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打ち合わせも、試作品のテストも、もちろんテントサウナの中。仕事というよりも、純粋にいちサウナーとして「こんなアイテムが欲しい!」を追求したのが、日高村産生姜が香る「テントサウナ用ロウリュ」です。 2020101_003.jpg2020101_011.jpg パックのまま水出しし、成分が染み出た水を熱々のサウナストーンにかければ、水蒸気と共に爽やかな生姜の香りがテントじゅうに立ち上ります。すると体感温度が一気に上昇し、これでもかという量の滝汗が!そしてほどなくしてやってくる「ととのう」の瞬間......皆さん、ご覧の表情です。
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「自分たち自身が楽しみながら作った商品が、地域のお役に立てると同時に、皆さんのテントサウナをより気持ちよく楽しめるきっかけになれたらうれしいですね」
生姜の香りで蒸されてツヤッツヤの市橋さんの笑顔に、この商品に対する愛情と自信を感じます。

ほんの数年前まで、縁もゆかりもなかった市橋さんと高知県。
サウナにハマらなければ、生涯で訪れることすらなかったかもしれないこの地に、彼は今、強い想いと大きな希望を抱いています。

「高知はきれいな川がたくさんあるのが魅力です。そして何より、高知の皆さんの川に対する思い入れが強くて、川を推している感じがいいなと思っています。今回の商品開発でも、『地域のために面白いことができるなら!』とすぐにひと肌脱いでくださる感じが爽快でした。改めて日高村が、高知が好きだなと思った瞬間です。
コロナが収束したら、サウナ好きの友人を連れて仁淀川でテントサウナをしたいですね。ちょっとしたフェスっぽくできたら絶対に楽しいだろうな〜」

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好きなことに夢中になっていると、 自然と人が集まってきて力を貸してくれる。
自分の好きなことを追求し、人を巻き込みながら地域のためのアクションを起こす......簡単そうで難しい生き方です。「僕は生きるということは、『誰かから何かを常に与えられている』状態なのかと思っています。
仕事でもプライベートでもそれをちゃんと自覚して、人から与えてもらったものを自分なりのカタチに変えて、周りにお返しできればいいなと思っています」
そのお返しのひとつが、今回の商品開発。人生を豊かにしてくれるサウナと、自分を受け入れてくれた日高村への恩返しを、市橋さんならではのカタチにすることができました。
「好きなことに夢中になっていると、興味を持ってくれた人が『なんかアイツ楽しそうだな』って集まって、力を貸してくれるのが醍醐味です。それは今回の商品開発でも感じました。一方で、個人で取り組む以上、すべての責任は自分自身にあります。だからちゃんと自分で考えて、自分で決めることが大事なのかなと思います」
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楽しむ側から楽しませる側へ...... 自分だけでなく、人や地域も「ととのう」ために、今日も市橋さんは、この空の下どこかの町で気持ちのよい汗を流しています。
サウナで町おこし? 人と地域を「ととのえる」、新しい地域活性のカタチ。