とまとと tomatoto小さな村の小さなゲストハウス兼、エントランスが誕生しました。

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とまとと tomatoto

in hidaka village
Eat & Stay とまとと
日高村の水辺のこと
元村長が教えてくれた日高村の自然の魅力
  • めだか大池

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hidaka village
日高村を東西に流れる日下川は、村の東の端で仁淀川に合流する。この日下川沿いの地域は役場やスーパーなどがある村の中心地だが、海抜が低く、昔は度々ひどい水害に悩まされてきたそうだ。日下川から仁淀川に放水する水路ができてから、浸水の被害はずいぶん減ったという。
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そんな日下川流域の中でも最も海抜が低いのが、日下川調整池の一帯。治水が進んだ今では、ここは高知県で最大の内陸型湿地として、生物多様性が注目されている。
平成8年にめだか大池がつくられて、環境活動が始まりました。草を刈ったり、アジサイの手入れをしたり、できることをできるだけやっています」と、案内してくれたのは、元村長で今はこの周辺の整備活動や環境教育活動に取り組んでいる、中野さんだ。
「ここは、春には桜が見事ですよ。今700本ですが、1000本まで増やしたい。そのあとは3000株あるアジサイが咲きます。夏にはメダカがたくさんいます。冬は、渡り鳥たちのオアシスになっています。おなじみのカモやサギもたくさんいますよ。あそこにいるのは、黒い体にくちばしから額にかけての白い部分が特徴的なオオバンですね」
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今はこの日下地域に暮らし、この湿地帯の自然を大切にしている中野さんだが、生まれたのは日高村の能津地域。仁淀川の清流沿いの山間の集落だ。
「みんな山に段々に畑や田んぼを作っていましたね。田んぼのひとつひとつは狭くて、かぶっている笠で隠れてしまうくらい小さな田んぼもあった」
という山の農業の風景は、今も能津に残る。
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「私が中学生くらいのころにみかんが流行って、どこのうちでも仏手柑やだいだい、小夏、へそみかんなんかを作るようになって。昔のは今より酸いかったな! でも、子どもらにとっては季節限定のごちそうで、色が黄色くなる前にとって食べてしまってね(笑)。
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川沿いにもごちそうがあって、夏には桑の実、秋にはエノキやムクノキの実が成る。川に入れば魚やカニ。水が冷やいときはイダ(ウグイ)。5月15日の川開きは自分の誕生日で、アイ(アユ)の寿司がお祝いのごちそうでした。昔は今より太いのがたくさんおった。アイ漁の鵜の船が川を通ると、アイが跳ねて川原にあがるから、それを拾って歩く。ツガニも昔は太かったなあ。そうやって仁淀川の恵みで育ったし、仁淀川で遊ばしてもらって育ったわけです」
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日高村の自然の恵みの中で育ってきた中野さんは、大人になって就職で大阪に出たときにも「仁淀川が恋しいと思った」という。そしてその大阪暮らしを経てやはり日高村に戻ってきて、ここで暮らすことを選んだ。 そして今は、日高村のもう一つの水辺であるこの湿地帯で、その自然の魅力を子どもたちに伝えようとしている。
「日高村は高知市内から近いので、市内の子どもたちもよく来ます。子どもたちは1回自然の中で遊ぶと、また来る。そうやってここで、四季を通じて子どもたちに様々な自然体験をしてもらいたいなと思っています」
【聞き手・文=川瀬佐千子(編集者) 写真=宮川ヨシヒロ(フォトグラファー)】