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トマトに隠れたパワーあり!血管の老化を防ぐエスクレオサイドAの秘密 〜Vol.2 リコピンとエスクレオサイドAって何が違うの?〜
おはなし 2022.02.27
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近年、トマトに "エスクレオサイドA"という成分が含まれていることが発見されました。


このエスクレオサイドAの研究を行っている東海大学農学部バイオサイエンス学科食品生体調節学研究室の永井竜児教授に、この成分の発見秘話やその力、またこの成分を含むトマトの可能性についてお話を伺う連載(全4回)の第2回です。


今回は、エスクレオサイドAが体の中で実際にどのような働きをしているのか、同じような働きをするリコピンとの違いについて教えていただきます。


トマトに隠れたパワーあり!血管の老化を防ぐエスクレオサイドAの秘密 全4回
Vol.1 発見は偶然から
Vol.2 リコピンとエスクレオサイドAって何が違うの?
Vol.3 エスクレオサイドAの吸収率をUPさせる方法って?
Vol.4 最先端の研究をしている永井先生に聞く!トマトの食べ方

永井竜児教授 平成11年3月熊本大学大学院医学研究科修了・博士(医学)。専門分野は、食品機能学、生化学。サウスカロライナ大学客員教員を経て、熊本大学大学院医学薬学研究部病態生化学講座・助教。日本女子大学・講師、東海大学農学部バイオサイエンス学科食品生体調節学研究室准教授を経て、平成29年4月同教授。日本メイラード学会、日本抗加齢医学会、日本酸化ストレス学会等の評議員を務める。 テレビ朝日系の「林修今でしょ!講座」、テレビ東京系「主治医が見つかる診療所」等にも出演。トマトの栄養素「リコピン」「エスクレオサイドA」に関して講義をし、トマトのパワーが大きな話題になった。

── エスクレオサイドAは血管の老化を防いでくれるとのことですが、血管の老化を進めるものといえば、悪玉コレステロールというイメージがあります。


はい。確かに、血管の老化のメカニズムには、悪玉コレステロールが深く関わっています。


しかし、悪玉コレステロール自体が悪いのではなく、油の多いものを食べ過ぎたり、生活習慣が荒れることによって、悪玉コレステロールと善玉コレステロールのバランスが崩れてしまうことが問題なんです。


そこでまずは、悪玉コレステロールと善玉コレステロールは、どのような役割を持った成分なのかご説明しましょう。
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悪玉コレステロールと呼ばれているものは「LDLコレステロール」、善玉コレステロールと呼ばれているものは「HDLコレステロール」です。


コレステロールは脂質(油)のため水に溶けず、そのままの状態では、全身に届けることができません。


そこで、LDLやHDLという脂質を運ぶ船にコレステロールを乗せて運んでいるのです。
肝臓でコレステロールを受け取り、LDLに乗せて全身に届けているのが、LDLコレステロール。
逆に、配りすぎたコレステロールを回収して、HDLに肝臓に戻しているのが、HDLコレステロールです。


── 全身に配られるコレステロールは、どのように使われているのですか?


全身に配られるコレステロールは、血管や細胞をしなやかにするために使われています。


例えば、腕を軽く叩いたくらいでは、全然アザにならないですよね。
これは、コレステロールが血管をしなやかにしてくれているおかげで、血管が簡単に切れないからです。


また、戦前・戦後の食糧難の時代に脳卒中という、脳の血管が破ける病気が頻繁におこりましたが、これはコレステロール不足によって引き起こされます。
寒い冬にトイレに入った年配者が脳卒中を起こすという話を聞いたことはありませんか? 
これは、便座が冷たかったり力んだ際に血圧があがり、しなやかさが低下した血管が切れてしまうためにおこります。

つまり、コレステロールは糖分や塩分と同様、私たちにとって必要不可欠な成分なんです。


しかし、今の時代は油の多い食べ物が増えて、逆に運動量は減り、コレステロールが飽和状態になりやすい。そのため、全身にコレステロールを配る役割を担っているLDLが「コレステロールを配りすぎている」という理由で、"悪玉"コレステロールというかわいそうなあだ名がついてしまったんです。



── なるほど、だから悪玉コレステロールと善玉コレステロールのバランスが重要なのですね。
では、血管の老化はどのように進んでいくんですか?
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「LDL値が高い」という言い方をしますが、これはコレステロールを運ぶLDLが余って血中濃度が高まってしまう状態。


血液中で長時間放置されたLDLは次第に血管の内側に忍び込み、そして次第に錆びてしまいます。そうやって錆びて使えなくなってしまったLDLのことを酸化LDLまたは、変性LDLといいます。


免疫細胞のマクロファージは体のなかを回って侵入者がいないかパトロールしているのですが、この変性LDLを、外からきた侵入者と勘違いして食べてしまうんです。


そして変性LDLからコレステロールを受け取ったマクロファージは、酵素の働きによって細胞内に蓄積できる成分(注)に変化させてしまいます。


すると、マクロファージはいくら変性LDLを食べてお腹いっぱいになっても、食べることをやめず、次第に死んでしまいます。
マクロファージの細胞内には水があり、コレステロールは油のため、マクロファージの体の中では水と油が分離してしまう。変性LDLを沢山食べたマクロファージを顕微鏡で観察すると、油滴で泡がたったように見え「泡沫化(ほうまつか)マクロファージ」と呼ばれます。


その泡沫化マクロファージが血管の内側に溜まることで、血管が狭くなり最終的には血管が詰まってしまうんです。
これが、血管の老化が進み、脳梗塞や心筋梗塞が引き起こされる状態です。


(注)より正確に述べるとコレステロールエステルという構造。


── 血管の老化のメカニズムがわかりました。 『~Vol.1発見は偶然から~』で、お話いただいたように、この過程の中で、エスクレオサイドAか糖鎖の帽子が取れたエスクレオゲニンAは血管の老化を防いでくれるんですね!

トマトに隠れたパワーあり!血管の老化を防ぐエスクレオサイドAの秘密 ~Vol.1発見は偶然から~

はい、そうなんです。変性LDLを食べたマクロファージが酵素の働きでコレステロールを溜め込むのを防いでくれるのです。


エスクレオゲニンAが酵素を止めることで、マクロファージにコレステロールが溜まらなくなり、血管にマクロファージの死骸が溜まることもありません。
変性LDLからマクロファージの中に入ってきたコレステロールは、いずれHDLが回収し、肝臓に戻してくれます。

もう1つ、血管の老化を防ぐ働きをする食品成分は、ご存知リコピン。リコピンは、LDLのお手入れをして、錆びてしまうのを防ぐ働きをしてくれます。
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このようにエスクレオサイドAとリコピンは、働くメカニズムは全く違うけれど、どちらも血管の老化を防ぐために重要な働きをしてくれる成分なのです。


── 今回は、血管の老化を防ぐ、リコピンとエスクレオサイドAの働きの違いを徹底解説していただきました。永井先生、ありがとうございました。


次回は、リコピンの吸収率をあげる方法とは?永井先生が今まさに行っている最先端の研究に迫ります!

トマトに隠れたパワーあり!血管の老化を防ぐエスクレオサイドAの秘密 〜Vol.3 エスクレオサイドAの吸収率をUPさせる方法って?〜